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痙縮の治療を知りたい方
こどもの痙縮の
リハビリ
テーション療法とは?

監修:横浜市立大学附属市民総合医療センター リハビリテーション科 根本明宜 先生

脳性まひによる痙縮(けいしゅく)の治療の中心は、リハビリテーション療法です。リハビリテーション療法は、手足の動きやすさ、バランス、筋力を改善するために、脳性まひが疑われたときから始めます。リハビリテーション療法を行う前には、お子さんができることを見定めて目標を立て、それを積み重ねていきます。早い段階でのリハビリテーション療法は、ご家族だけでなく、医療スタッフや地域の関係者などが一緒になって、お子さんを見守る体制を整える意味もあります。

脳性まひのリハビリテーション療法とは?

リハビリテーション療法は、痙縮などを改善させる方法として欠かせません。

脳性まひの原因である脳の異常な部分を治す治療法はありませんが、脳の発達を手助けし、運動や姿勢に悪影響を及ぼす痙縮などを良くするために、さまざまな方法があります1-3)。その1つがリハビリテーション療法です1-3)。リハビリテーション療法には、理学療法、作業療法、言語聴覚療法などがあり、お子さんの発達に合わせて行われます。

理学療法とは?

動き(運動)を、より良くできるようにします。

理学療法とは、体操や運動、電気刺激、マッサージなどで体の動きを良くするリハビリテーション療法の1つです4)。日本では、脳性まひに対して、さまざまな方法を組み合わせた理学療法が行われることが多いです5)。以下に理学療法の例を示しますが、他にも多くの方法があります。

理学療法の例2,6)

  • 集中的理学療法:
    週に4、5回程度の理学療法をすることで、運動機能が良くなるとされている
  • 筋力トレーニング(筋トレ):
    比較的動ける、歩けるお子さん(GMFCSレベルⅠ~Ⅲ)、筋トレで筋肉を増やす
  • 関節可動域(ROM)訓練、ストレッチ:
    筋肉や、腱を伸ばすことで筋肉の短縮を防ぐ

作業療法とは?

生活の中でよく使う動作を、より良くできるようにします。

作業療法では、工作などの「作業」を通じて4)、生活の中でよく行う動作をよりスムーズにできるようにすることを目的とします。お子さんの場合、遊ぶことが「作業」になり、生活で用いる動作を覚えることにつながります7)

作業療法の例2,6,7)

  • CI療法(Constraint-induced movement therapy):
    片まひの患者さんに用いられる方法。まひしていない側の腕などをわざと動かせないようにして、まひしている側の腕や手指を積極的に動かすように促す
  • 自助具や装具の使用:
    ハサミやスプーンなど、お子さんの状態や環境に合わせた道具を使う方法。道具を使うことで、動作を覚える練習につながることもある

言語聴覚療法とは?

コミュニケーションの問題と、食事の問題に取り組みます。

言語聴覚療法は、言葉を中心に、人とより良いコミュニケーションをとれるようにするために行われます8)。言語聴覚士は、食事に関するリハビリテーションも担います9)

リハビリテーション療法だけでいいの?

リハビリテーション療法に飲み薬や他の治療法を加えたり、リハビリテーション療法でも各種を組み合わせることにより、さらに高い効果が期待できます。

リハビリテーション療法に、お薬や手術など他の治療法を組み合わせることで、より高い効果が期待できます。例えば、ブロック療法と筋肉への電気刺激をリハビリテーションに組み合わせる治療法があります6)。また、髄腔内直接注入療法後にも各種リハビリテーション療法が取り入れられます2)
さらに、体に装具を着けて、筋が短くなったり関節が動かなくなったりすることを防ぐ装具療法もあります6)

  1. 1)鈴木恒彦ほか監修. 子育てハンドブック~脳性まひ児とともに~. 東京, 市村出版, p.4-13, 2021.
  2. 2)粟國敦男, 金城健編集. 脳性麻痺運動器治療マニュアル. 東京, メジカルビュー社, p.24-28, 106-113, 2020.
  3. 3)長澤美帆. MB Med Reha. 2019, 232, 59-64.
  4. 4)理学療法士及び作業療法士法(昭和四十年法律第百三十七号)
  5. 5)米持喬, 鴨下賢一. MB Med Reha. 2019, 232, 37-43.
  6. 6)日本リハビリテーション医学会監修, 日本リハビリテーション医学会診療ガイドライン委員会ほか編集. 脳性麻痺リハビリテーションガイドライン 第2版. 東京, 金原出版, p.84, 96, 97,108-111, 123,124, 131-132, 2014.
  7. 7)横井裕一郎, 和泉裕斗. MB Med Reha. 2019, 232, 31-36.
  8. 8)言語聴覚士法(平成九年法律第百三十二号)
  9. 9)椎名英貴. MB Med Reha. 2019, 232, 45-51.